親子断絶防止法案について、それQ&A形式で解説します!
親子断絶防止法の制定の現実味がおびてきて、様々な議論が交わされている訳ですが、ある程度の共通認識を図りたいと思い、Q&Aページを作成することにしました。不十分な内容だと思いますので、不備・修正ありましたら、コメントをください。
前提として、子の最善の利益を定義した国際条約の「子の権利条約」が親子断絶防止法のベースになっています。
とりわけ関連する重要な条文は以下です。
第7条1「児童は、出生の後直ちに登録される。児童は、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、また、できる限りその父母を知りかつその父母によって養育される権利を有する。」
第9条1「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。」
第18条 1「締約国は、児童の養育及び発達について父母が共同の責任を有するという原則についての認識を確保するために最善の努力を払う。」
※全文はこちらから → 子どもの権利条約 全文 | 日本ユニセフ協会
まずは知って頂きたい、悲しい親子の現状をご紹介。
Q1、連れ去り得ってなに?
A.”継続性の原則”という裁判所の運用がり、現時点では子どもを実際に養育している親の養育状態に問題なければ、現状を追認する傾向にあり、先に子どもを連れ去って養育実績を作った方が裁判上も有利な状況であること言います。なお、この”継続性の原則”は法的な根拠はありません。むしろ日本が加盟しているハーグ条約の考え方と比較すると、裁判所の運用はその対局にあります。
Q2、子どもに会えないなら裁判所に申し立てしたら?
A、面会交流調停・審判事件(認容・成立)の終局内容について、平成 21(2009)年月 1 回以上 は 52.1%、2、3 か月に 1 回以上 16.2%、4~6 か月に 1 回以上 5.7%、長期休暇中 3.2%、 別途協議 10.4%、その他 12.4%となっており、宿泊有りとされた割合は14.1%となっています。
これまで毎日一緒にいた親子にとって、裁判所で決められる「面会交流は月1回、宿泊は許されない」なんて内容は受け入れがたいと思います。
出典:家庭裁判所での面会交流事件と実務
http://www.moj.go.jp/content/000076565.pdf
よくあるこの質問について
Q3、
暴力や虐待から逃げることができなくなる!
A、そのような事案がある場合は、刑法の暴行罪や傷害罪、DV防止法、児童虐待の防止等に関する法律の範疇になるので、本当にその危険性がある場合は、まず警察に相談してください。なお、子の権利条約においても、子どもへの虐待は明確に批難されており、また親子断絶防止法案の第9条にも特別な配慮がされると明記されているので、ご安心ください。
話題になっているこちらの記事から紐解きたいと思います。
離婚した親に求められる覚悟―親子断絶防止法の問題点(2)(千田有紀) - 個人 - Yahoo!ニュース
親子断絶防止法案の問題点―夫婦の破たんは何を意味するのか(千田有紀) - 個人 - Yahoo!ニュース
Q4、
法律の目的を子どもの連れ去り防止だと、まず宣言しているからである。*1。つまりよくドラマで見る、夫婦喧嘩の挙句「子どもを連れて、実家に帰らせていただきます」ということを禁止したいというのだ。
A、合意がなく、一方的な子の連れ去り、引き離しの防止を目的とするものであって、その例は少し違うように思います。法案そのものは子の連れ去りの"防止等の啓発"
です。
第7条1「父母が婚姻中に子の監護をすべて物などの取決めを行うことなく別居することによって、子の父母の一方との継続な関係の維持ができなくなる事態が生じないよう、または該当自体が早期に解消されるよう、必要な啓発活動・相談助言などを行う。」と記載されています。
ただ、日本も加盟しているハーグ条約では、国境を越えた子どもの不法な連れ去りを原則として禁止しているため、国内事案との整合性が取れていません。国外でも国内でも隣街でも会えなければ、どこにいても大差ないと個人的には思います。
※ハーグ条約について
ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約) | 外務省
Q5、
よく読めば附則の部分で、共同親権を導入すべきであるとはっきり書いてある*2。民法の大きな根幹にかかわる変更を、このような法案で簡単に指示することは不適切である。導入には慎重な議論と検討を重ねるべきことである。
A、附則の部分には「離婚後の共同親権制度の導入」を速やかに検討し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる。とあります。
検討するとはありますが、導入すべきとはありませんので、著者の拡大解釈だと言わざるえません。
仮に与党が過半数を握っているので可能ではありますが、そこまで含めて言及することは的外れだと思います。
Q6、
オバマ大統領への日本側からの「手土産(当時の報道)」として、あまり審議されることもなく、ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)を締結したからには、国内法にも手を付けることになるとは思っていた。アメリカの「外圧」には逆らえまい。
A、アメリカからのアプローチなのは確かかもしれませんが、ハーグ条約は欧米の先進国のほどんどが加盟し、世界では96カ国が加盟しているもはや国際条約です。外圧に屈したというよりは、ようやく世界基準に追いついたという表現の方が正しいでしょう。
Q7、
面会交流を義務化される
A、義務化ではありません。法案の第7条「面会交流が子の最善の利益を考慮して定期的に行われ、親子としての緊密な関係が維持されることなるようにするものとする」とあるように努力義務であり、優先されるのは子の最善の利益であり、虐待などが懸念される場合は子の最善の利益に反します。
また第9条に「児童虐待、配偶者へに対する暴力などの事情がある場合には、子の最善の利益に反することとならないようにと特別の配慮がはされなければばならい。」と規定されています
Q8、
この法案に養育費の規定がないのだろうか。
A、第6条に「面会交流及び養育費の分担に関する書面を取決めを行うよう努めなければならない」とあり、離婚時に取り決めるようになっています。また養育費については、いくつかのハードルはありますが、裁判所を通して強制執行することが可能です。また強制執行の難易度を下げることができるように、別のグループで検討されています。
Q9、
「月に何回会うこと。何時間会うこと。それが望ましい」と国家が具体的に基準を決めて命令するというのは、私にはかなり違和感がある。また「監護権を持っている親に会わせる義務がある(履行されない場合は違約金を請求できる)」という形態にはなおさら違和感がある。国家がすべきなのは命令ではなくむしろ、面会交流をサポートすることなのではないか。
A、法案では面会交流の頻度や回数、時間などは一切規定されていません。裁判になったときには、双方の意見を聞き裁判官が判決を下しますが、それはこれまでも行なわれてきたとことです。取り決めた面会交流が履行されないことを原因として、親権変更や違約金の判決は過去にあります。
後半の部分、面会交流をよりスムーズに行われるように国家がサポートすべきであることには賛成です。法案の第4条・5条にもその旨が規定されています。
Q10、
この法案で徹底的に無視されているのは、子どもの意志である。
A、子の権利条約に基づき、子どもの最善の利益をベースに検討されている法案です。それでも子どもの意思が無視されていると言うではあれば、子の権利条約を否定することにもつながりかねません。それは相当難易度が高いことだと思われます。
その他の疑問を紐解いていきたいと思います。
Q11、
養育費を払わない奴が悪い。子どもに会わせないやつが悪い。
A、裁判所にて別の事案として扱われますが、実際問題としてはどうしても、養育費と面会交流はリンクします。70%が面会交流ができておらず、また84%が養育費を受けていないという調査結果もあります。子どもの成長にはお金と親からの愛情の両方が必要であり「鶏と卵」のような話だと思います。
過去のいざこざはすべて消えていないと思いますが、お互いが譲り合う姿勢が必要なのではないでしょうか。養育費についてQ8参照。
出典:何をもって子どもの最善の利益とするか、当事者同士の意見が食い違う現実…
続きまして、新川てるえさんのご意見について、、、
離婚後の「親子断絶」を防ぐ法案に思うこと…|離婚・恋愛・再婚・シングルママ支援・NPOの活動報告
Q12、
私はそれよりも【子が離婚後も経済的、精神的に安定した生活を持つことが子の最善の利益に資する】と思います。だから、この法案の中に養育費に関する記載がほとんどないことにすごく疑問を感じています。
A、養育費については、上記Q8を参照ください。原則として、お金も両親からの愛情も両方が大切なのは間違いありません。仮に養育費を義務化とするなら面会交流も義務化という流れになりかねません。自分の子どもではあるが、親の権利を一切行使できないまま養育費を払い続けるのは困難だと思います。具現化しやいお金の部分だけを義務化するのもおかしい気持ちもするので、義務化は更なる議論が必要だと思います。
Q13、
母親が父親から暴力を振るわれたり、子が虐待を受けて離婚するケースも多くあります。
法案は、児童虐待などに「特別の配慮」を求めてはいますが、具体的な配慮の内容がなんら保障されていないところが怖いと感じるところです。
A、上記Q3にあるように、恐怖心は理解しますが過去の配偶者への暴力は、直接的には子の面会交流関係しません(面前DVは間接的なので)。ただし、児童虐待への懸念がある場合は、子の権利条約に基づき裁判所で判断されるべきだと思います。最初から子どもを預けるのも不安だと思いますので、試験的に親族に付き添いを願う、第3者の多い場所を指定するなどされてはいかがでしょうか。
Q14、
・「引き渡しのルール明文化へ」
この部分の法案の記載もどんなものかと思うところで、DVへの配慮はもちろんのところですが、離婚前の別居に関しては、どうしようもない事情が様々あります。多くは勝手に連れ去ったわけではありません。
追い出されたケースもあり、モラルハラスメント(精神的な暴力)のケースもあります。
連れ去りというワードだけが目立っていて、賛成できない内容になっているなと感じるところです。
A、引き渡しのルール明文化については、今後の検討課題として報道ではありますが、現時点で親子断絶防止法案に記載されている内容ではないので省きます。
「多くは勝手に連れ去ったわけではありません。」とはありますが、親権目的の連れ去りがあるのも事実な訳で逆から見ると「多くは勝手に連れ去りがされた」となってしまう訳で、統計がないのでなんとも言えません。
モラスハラスメントについては、定義が定まっておらずとても難しい問題です。本人が感じることはあるんでしょうが、そのラインは本当に様々です。継続的に人格否定をされているなどあれば、ます証拠を残す。スマホで簡単に証拠を残すことができるもあるので、まず証拠を残すことが大切だと思います。文明が進んだ現代で、証拠もなく言った言わないで片方が有利・不利になることはとても危険だと思います。
Q15、
・また「でっち上げDV」という一文がありましたが、これもよく聞くワードですがとても疑問。全く何もしていないのにDVと言われる人はいないと思います。
A、いわゆる家庭内の事案で客観性に乏しく、上記Q1であるように連れ去り得の状況のため、でっちあげDVや言ったもん勝ちの状況であるのは事実です。ただし暴力事案がある場合は、まず頼るべきは警察であり裁判所です。(DV防止法については様々意見がありますが)
Q16、
この法案は再婚家庭についてまでは考慮されていません。
A、ご意見の通り、再婚家庭についての記載はありません。離婚家庭が増えてきたからこそ、再婚家庭について社会で考えるべき事案だと思います。社会全体が離婚を寛容的に受け入れ土壌を作ることが先決ですね。この点は、引き続き様々な議論がされるべきだと思います。
Q17、
今回の法案ですが、離別親側の意見をきちんと踏まえているでしょうか?
さらにいうと、子ども側の意見をきちんと踏まえているでしょうか?
A、親側の意見と言うのが具体的ではないのでわかりませんが、暴力事案や児童虐待、養育費についてであれば、上記に回答はあります。
子ども側の意見というのも抽象的ですが、日本では国際的な「子の権利条約」に加盟しており、子の最善の福祉は「子の権利条約」で定義されています。親子断絶防止法案はその条文に即した内容にになっています。子の権利条約に違反している部分があれば、根拠を添えてコメントお願いします。
※親子断絶防止法案の全文はこちら参照してください。
http://nacwc.net/14-2016-10-10-06-05-20/8-2016-10-05-06-13-46.html
著書論
Q、子の福祉や権利とは、
A、子どもが求める距離感でいてあげることだと思います。連れ去られ親ですが、子どもたちが制限なく会えるところにいたい、それだけです。成長につれて、友達も増えて、部活だったり、家庭外の付き合いも増えるでしょう。それを制限するつもりは毛頭ありませんし、むしろ歓迎すべきことだと考えています。
その時々で、子どもが親に対する距離感は変わると思いますが、近からず遠からずその距離感を保つことが親としての立ち位置ではないでしょうか。
今の裁判所の運用では、子どもにとっての最適な場所にいることができません。それだけです。
ふー、疲れました。ワイン片手にざっと作ったので、足りない部分や修正すべき部分があると思います。間違いはもちろん、みなさんの意見をどんどん反映させて、法案を含め、子の最善の利益を考える場にしたいと思っていますので、どしどしコメントください。